1999年10月11日(月)
名古屋競輪後節第3日目決勝日
久保田です。
名古屋旅打ちレポートがやっと完成しました。
やっぱり長くなりました。
第1章 初の「旅打ち」なのだ
 平成11年10月11日、今回の旅打ちレポートで私は近鉄鶴橋駅ホームにいる。
 前回予定だった向日町記念は台風の雨で私が戦意を喪失したため途中で中止にしていた。そこで今回はその穴埋めとして名古屋まで「旅打ち」で行こうと決まったのである。10時6分発のアーバンライナーで指定席を取っているのにカミガタ氏はまだ来ない。すでに残り時間は10分を切っている。こうときに待っている方がたまらない。普段は待たせる方が多いので余計に応える。
 カミガタ氏が来た。ちょうど10時である。普通はもうちょっと早めに来るもんですよ、と言ってみても全然気にしていない様子だ。すでに心は名古屋のバンクに飛んでいっているらしい。どうにもこの人の頭には競輪しかないようだ。

 定刻にアーバンライナーは鶴橋を出発する。車内で2時間ほど競輪談義に花を咲かせる。今回は大ネタがある。この「オビドケスポーツ」がきっかけでケイリン333のじゃん氏と知り合いになれたのだ。この人は「ノー和了ならやめる」という予想コーナーを以前HPでされていてノー和了は3−2を打ち間違いで3−3と書いてしまった時だけ、というかなりの車券師である。一緒にお酒を飲んだときはここでは絶対書けないような貴重な話も随分うかがった。私は最近、車券上手と会うと必ず必勝法を聞いているのだが、今回はこの「じゃん理論」がどこまで通用するか試す意味もある。スポーツ新聞の電投コーナーの出走表を見ても決勝以外は知ってる選手が少ないので、期待しているのである。
 12時過ぎに近鉄名古屋駅に着いてそこから名鉄のバスターミナルへ向かう。バスターミナルは名鉄名古屋の上にある。名古屋駅前というのは、最近高層ターミナルビルが出来て今から再開発をしているらしい。前から人の流れの一極集中で問題になっていてそれを分散させる意図らしい。

 そんなことを思いながらターミナルの競輪バス乗り場に行くとこれがとんでもないところだ。薄暗いターミナルの一番奥で昼か夜か分からない。車道の向かい側に一宮や大垣や岐阜競輪の看板が並べてあるが、どれもデザインが古くて薄汚れている上に薄暗い蛍光灯がスポットで当ててあるのだが、これがものすごく陰気に見えてしまう。「行ったら家庭崩壊、サラ金地獄やでぇ」という感じがひしひしと伝わってくるアヘン窟のような雰囲気だ。こんなところに競輪を知らない人が来るわけがない。これで売り上げが伸びない」そりゃそうだろう。まだまだ企業努力が足りないのが丸わかりだ。と怒っていると着いたバスがなんと名鉄観光のデラックスバスなのだ。園田競馬でも奈良競輪でもファンバスといえばスクラップ寸前のが来るのになんという気合いの入り方だ。サービスが良いのか悪いのかよくわからない。カミガタ氏に聞くと大垣まで無料バスが出ているかららしい。大阪で言うと阪急梅田から和歌山競輪までバスを出しているようなものである。中部地区のファンは羨ましい。


 第2章 大盛況の名古屋競輪  
バスに15分ほど乗っていると住宅地の真ん中で降ろされた。競輪場は住宅地の真ん中にあるらしい。ホントか?
と思ってカミガタ氏の後を付いて歩くとホントにジャンジャンジャーンと打鐘の音が聞こえてきた。すでに4レースが始まっている。
 ここで「じゃん理論」その1を思い出す。「競輪場に着いたらまず専門紙を買え」である。スポーツ新聞の方が安いけどあれでは情報が少なすぎて予想にならないらしい。さっきカミガタ氏が「ひかり」を買っていたので私は「中部競輪」を買う。400円だ。売り子のオバチャンが「今日は荒れるでぇ」とアドバイス(?)してくれる。
このテの能書きで「今日は堅い」というのを聞いたことがない

 入り口の自動改札に50円玉を入れて入る。まず思ったのが人が多い。記念の決勝ということもあるのだろうが、近畿地区と比べて人口密度が1桁違う。
 予想外の熱気に驚きながらも車券を買う前にまずはオビスポ調査隊としての責務を果たさねばなるまい。まずが売店のお酒から。入り口の右にある売店に近づいてみる。まずい。競艇場でおなじみの「ホッピー」の看板が壁に掛けてある。と思ったら正面に大きな字で「生ビール380円(安い)」と書いてあった。ホッと一安心。普段ならここで一杯飲むのだが今回は帰宅次第、夜中まで仕事をせねばならない(実際2時くらいまでやった)。ここは我慢の子で通過。
 次にドリンクサービスだ。おっ、なんとお客が一つの注ぎ口に集中している。なんとそこには「冷たい紅茶」手書きの紙(いかにも競輪らしい)が貼ってあるではないか。飲んでみる。かなり甘い。どっかで覚えのある味だ。あっそうだ、名古屋だから名糖紅茶か(爆)。なかなか旅情をかき立たせてくれる(どこが?)グッドサービスだ。
 それからぐるっと場内を半周してみる。建物もなかなか綺麗だ。岸和田もいいかげんにリニューアルしろよ、と思わず思ってしまう程、競輪場にしては清潔感がある。そしてバック側には木も植えてあってちょっとした林になっている。名古屋競輪場は中村公園の中にあるそうで、車券を買ったら木陰でリフレッシュもできるというなかなかの環境だ。

 おっと、そうこうしているうちに5レースの締め切りが迫ってきた。まずは様子見で少しだけ買ってみよう。新聞を見ると「9・15264・873」と並んでいる。9の先行1車で1と8のマクリ合戦らしい。私は400バンクというと甲子園と岸和田しか知らないので、まずは甲子園式(ラインの強い方を重視)でいってみる。もちろん大名ラインの15と51だ。100円ずつ買って金網にしがみつく。

 ここで気が付いたのだが名古屋は施設に結構お金を使っているので、金網も豪華(?)だ。かなり太い杭を打ってその30センチ位前にかなり分厚い金網が張ってある。これだと視界で消すことも出来ず、選手が前に来ても見えづらい。まるで刑務所の運動会を見に来ているようだ。もう時代も2000年まで数十日というところまで来ているのだから、なんとか改善して欲しいと思う。
 レースの方は1が踏んだときに5が少し離れてしまい、挽回したものの8に上手くやられて175で入線。車連2850円。あれ、これじゃあ甲子園じゃなくて岸和田やないの。よーす、それなら私の得意とするところだ。
 ちょっと得意になったところで次の6レースは機関車(2番)を使える9を中心に筋違いで、と予想。念のため予想屋の予想も買う。ほぼ同じ見解だ。筋残しの92を省いて95,59,91を買う。ところが今度は927とゴールしライン丸残りの甲子園タイプだ。うーん、よくわからん。

 とか悩んでいると次は第7レース、A級決勝だ。ここには私でも知っている関西の選手が出ている。1番車の植野幸喜(兵庫)だ。この人は私が競輪場に来ると決まって出てくる人だ。こういう人は異境の地では大事にしないといけない。今日は近畿ラインの2番手でほとんど人気がない。よっしゃ、ということで本命2番車、大前寛則(岡山)との折り返しを中心に勝負してみる。
 レースは6番車の近藤益徳(大阪)がSを取ってそのままイン粘りしたら後ろがゴチャついてそのまま265で決着。車連1880円。近畿ラインは3番岡田 仁(奈良)のマクリが不発で植野さんは見せ場なく終わってしまった。やはり競輪は先行の善し悪しを重視しなければならない。カミガタ氏は「電車の中では枚方ラインで2=6やとアレほど言ってたのに〜」と悲鳴。カミガタ氏の話によると、この6番車はカミガタ氏と同じ大阪の枚方出身、2番車も中学までは枚方に住んでいたらしい。なら、買えばいいのに(笑)。


第3章 ついにアイツが眠りを覚ます  
 とか思っていると6レースの配当が出た頃からなにやら場内全体が騒がしくなってきた。今までのヒラ開催のような雰囲気とは全く違う。そうだ、「あいつ」が登場するのを観客全員が待っているのだ。隣に座っているオバチャンも急に落ち着きが無くなって「ヨシオカ、ヨシオカ」と念仏のように唱えている。そう、私も初めて見るナマ吉岡稔真の登場である。

 チャーラン、チャーラン、チャーラーリーラーリーラーラ・・・。聞き慣れた選手入場のBGMが流れ出す。9番車の旭健太郎(神奈川)を先頭に選手たちが出てくる。もうすでにヤジは場内全体から噴火前のように盛り上がっている。そして白い帽子が見えた。どこからともなくヤジがヒートアップしてくる。周回し出すとまるでプロレスの入場行進のようにヤジか歓声かわからないものが後ろから追いかけていく。競輪場には何回か来ているが推定1万人ほどの観客が一斉に一人の選手に声援を送るというのは初めて見た。この人は年中これだけの歓声を受けながら競輪をしているのだ。競馬のG1にもない大きなパワーを感じさせながら、吉岡は敢闘門へと消えていった。観客も我に返ったように静かになって窓口へと向かう。これを見ただけで往復のアーバンライナー代の元を取ったような気がした。

 さて、予想をして車券を買おうと思ったが、新聞を見て困ってしまった。なんと今節の吉岡は初日から8、9着と「お腹がペコペコ状態」である。これでも「お帰り」をしないというのは今まで「お帰り」し過ぎてヤキが回ってきたのだろう。カミガタ氏ははじめから吉岡を買う気が全くないらしい。さっきから
1番の絡まない車券のことばかりしゃべっている。でもここはたぶん来るだろうと思う。というのもこのレースの並びは613・284・957である。6番車は機関車に打ってつけの三槻智清(佐賀)、3番車はまず差せない高田 誠(福岡)である。どうやら番組マンも3日間吉岡が飛ぶと「出待ち」の警備員を増やさないといけないから「勝てる」レースにするつもりらしい。後の選手は旭健太郎以外ほとんど知らない。困ったので新聞の通り13、31、12、15、19を買う。

 レースが始まってもやはり観客の関心は吉岡である。九州ラインも後方に置かされる展開になるが、打鍾のところで3番高田がイン切りに行く。げ、プロレス張りの裏切りか?と思うがカミガタ氏の「イン切って吉岡のお迎えか」と解説が入る。ふがいない同県のスーパースターのためには同僚は慣れないこともしないといけないのだ。苦労人やなー、とちょっと同情。すかさず三槻が出切って吉岡ハコ大名で最終バック。しかし3番高田がさすがにお疲れでちょっと吉岡から離れたところで2番村上義弘(京都)がすかさずカット。6123で2センターを回って直線。高田も頑張って追い上げたものの123でゴール。車連は筋違いで1760円ついた。
やるな、「中部競輪」


第4章 さすが記念競輪  
次の9レースS級特選も豪華メンバーだ。1番滝沢、2番海田、5番鈴木誠、9番高橋健二「昔の名前で出ています」という言葉がフッと頭をよぎるが、ここは「記念級」としておこう。

 ここは文句なく鈴木誠で行く。カミガタ氏も「今の鈴木なら最終2センター5番手以内で連安泰」と「当確」サインが出る。この選手も確か昔は(「光GENJI」全盛の頃)揃いのハッピを着た親衛隊が競輪場に押し掛けていたはずだ。今はさすがにふつうのS1選手だが、親衛隊がいた頃は今の神山雄一郎より強かった、というイメージがある。今日の並びはそのときと同じ、後ろに滝沢がつくらしい。この人も強かったけど、今は39歳のオトーサンである。機関車使いの鈴木に付いていけるのだろうか。たぶん千切れると考えて鈴木の頭から海田と「今の名前」で出ている3、4、8に200円ずつ。保険で裏に100円ずつ。オッズはやはり51が圧倒的に売れてるので決勝への軍資金稼ぎになるだろう。
 レースはやっぱりオトーサンは千切れて海田がハコを取りきる。やっぱり52だーと思うと差して259で入線。車連は1390円。保険では今日の収支を原点に戻すだけである。まぁ悪くはないのだが。

 次の10レースは全員知らない人ばかりだ。カミガタ氏に「新聞の本命ついてる佐々木龍也(神奈川)って強いんですか?」と聞いて呆れられる。しかたがないので甲子園のオールスターにも出ていたという3番車、香川の香川雄介から100円で5点買う結果は593で車連13790円。ホラ、やっぱり佐々木来えへんやん。


第5章 決勝戦は名古屋記念「競馬」!?
 さて、いよいよメインの決勝戦だ。ここだけ枠順を書いてみよう。
 1 △ 山田裕仁  岐阜 31歳 
 2 穴 小橋正義  岡山 32歳
 3 × 伏見俊昭  福島 23歳
 4   鰐淵正利  愛知 29歳
 5 ○ 井上貴照  群馬 28歳
 6   近藤幸徳  愛知 36歳
 7 ◎ 十文字貴信 茨城 23歳
 8   小原則夫  青森 37歳
 9 注 内林久徳  滋賀 35歳 
並び 641・389・752(予想印は中部競輪)

 きれいに各ラインの3番手が勝負所で自在に動いてくるというよくわからないレースだ。しかしうまくこのメンバーが優出してきたものである。本命が十文字になっているがまず要らないだろう。というのはこの選手は目標を決めて、その目標を牽制しながら自力で動くのがこの人の真骨頂である。甲子園オールスター2次予選で地元の大トロ・中村美千隆を「ライン付きのスプリント戦」で完封したのは記憶に新しい。しかし自分が本命を背負って自分でレースを作るのはまだ形が出来ていないような気がする。それにこの後、世界遠征も控えているようだ。中心にして車券を買うのは少し危険だ。
 と言って地元の近藤も先行とは言え36歳だ。見せ場作りが関の山だろう。できれば近畿の競輪王・内林から買いたいところだが、ほとんど単騎と言える競輪で車券を買ってはまるで素人である。ここはレポートもことも考えてヒモ評価まで。
 ということでここは最近売り出し中の伏見から行ってみよう。たしかどこかのHP(涙の車券?)に顔写真が出ていたはずである。近藤の横の動きで身動きのとれない十文字を見ながら東北ラインが出切って直線内林が外強襲が本線。それでも縦の足で十文字がマクって先行両立が裏線と決定。

勝負車券は以下の通りである。
  39 93 38 37 73 各500円
  38 83 各200円
          計2700円

 オッズは人気筋が13、17で10数倍なので上のはどれも40倍つく。名古屋まで来た甲斐があるというものだ。
 レースは私の本線の読み通りに進行する(ドキドキ)。シナリオ通り最終ホームで伏見がカマシ先行。十文字は周回から意図がよくわからない。さすがに2コーナーで4番手から早めに捲ろうとするが逆に近藤に内に入られて見せ場作りに協力する始末。最終2センターで
「いよいよ2万円コース完成かー!?」
と思ったそのとき、1番山田裕仁が後方からスーっと伏見のところまで訳もなく捲ってしまう。あれ?と思うと今度は内林がスーっと山田の後方まで来てしまう。いきなり事もなくシナリオは崩れ去り1と9の一騎打ちで直線へ。外の内林の方がカカリが良くあっさり918で決着。おいおい、これやったら競輪じゃなくて競馬やないか(爆)。最後の2人はちょっともライン使ってないやん(笑)。私の400バンクの攻略法に「名古屋・・・ラインが無くても大丈夫」という項目だけ残って名古屋記念競輪は幕を閉じたのであった。

 しかしやはり応援していた内林選手が優勝するというのはうれしいものだ。帰りのアーバンライナーの時間を気にしながら表彰式を見る。ここで驚いたのが20歳ぐらいのチーマー風の兄ちゃん数人が内林選手が出てくるのをフェンスによじ登って待っているのだ。そして出てくると「内林やったー」とか大声で声援を送っているのだ。中部地区の競輪ファンのパワーを見せられたような気がした。ちなみに当節の名古屋記念は3日間で62億売って記念競輪の売り上げ新記録だったそうだ。それからフェンス越しにチラッと見えた内林選手はなかなかの男前だった、と書いておこう。

内林選手!もしこれを読んでくれたらメール下さいね。
デジセンマンに負けてたらダメですよ。 


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