2001年5月3日(木)
久留米競輪前節初日

 西武園に行く直前から、門司に行こうかどうか迷っていたが、2日の仕事が終わって……一度は家までの切符を買うものの、やはり大阪発の「ムーンライト九州」に乗ってしまった。オレは突然、旅を決めてしまう性格なのである。
 久留米といえば、チェッカーズと中野浩一という予備知識が。昭和50年代にいずれも一世を風靡している。

 そんな久留米の街は、とにかく道が広い。そのわりに建物が……であるが、これもこの地の住民の交通の主役ともなっている、バス王国西鉄が、「文化」として張り巡らせた道路なのだろう。
 奈良公園のようにたっぷり敷地を使って、優雅な気分が味わえそうな緑深い公園の一部として競輪場はある。

 特別観覧席はホームとバックがある。バックは甲子園の1階スタンドのように、下からバンクを見上げる構造になっているので、びっくり。私は1000円を出してホームの方へ。うーん、何か机とイスがあるだけで、あまり特別な感じがしない。おばちゃんが入れてくれる無料のカップコーヒーは、おいしいけど。

 スタンドは数多く、雑然と建てられていた。
 とにかく食べ物屋の数が多い。各スタンドいずれにもあって、一つのスタンドで、競輪場としての機能がすべて揃っているのは、移動がおっくうな人にとっては、うれしいことだろう。 
 スタンドを歩いていると、「地場産即売場」という店が。「故郷は“くるめ”」という地元応援歌のカセットテープがあったが、歌手の名前は「池尻ゆかり」。池尻浩一(福岡63)の親族なのだろうか
  
 それにしても、この日のメンバーは豪華だった。特選は大前寛則(岡山57)福田博(香川79)藤野義高(佐賀52)大窪輝之(熊本72)、そして地元は、何と山口貴嗣(福岡82)湊崎裕次(福岡67)の100点レーサーコンビ。どちらか一人しか配分されないだろ〜。普通。これに滝川秀嗣(愛知71)小畑大臣(岡山73)橘州智(福井61)が脇を固める。
 おかげで96点ある石田和雄(和歌48)や、桑原大志(山口80)が、選抜回り。この二人の心中はいかばかりのものか。
 しかも9Rには、今期事故点で2班落ちしたものの、私の好きな地元の中谷渉(福岡64)が走っている。

 これでプラスになれば、叶姉妹ではないけど、本当の意味で“ゴージャス”だったのだが……。
 
 新聞は、数誌売られていたが、「新報」を選んだ。
 とにかく読んでほしい素晴らしい出来である。コメントの量も圧倒的。調子やラインを組む選手との関係など、「本音」が出ているのも、最高。全国のどの予想誌を見ても、これほどコメントがあるものはないのではなかろうか。一例を挙げてみる。

 10R
4番(小畑)「突然の追加だったし、中2日なので家に帰らず博多とかでブラブラしていました。疲れはありますね」
5番(山口)「湊崎先輩との連携は初めてです。これまで地元戦は人気を裏切り続けているので今回こそはと気合を入れ仕上げてきました。優勝は前々回で通算4回。先行と決めず自然体で力出し切る積りですけど、先輩には絶対迷惑は掛けませんから」
6番(滝川)「まだ追い込みに転向したわけではなく迷っている最中です。自力の後輩が増えてきたので、自然に追い込みも増えると思いますよ。このメンバーでは先行は厳しいので、流れ見て自在に捲り狙って
7番(大前)「今期は本気になってS級を狙ってますが、それで事故点を怖がる様なことはしませんから。ここは正月早々ファンに迷惑を掛けているので、特に気合入れていきます」

 どうだろうか。ここまで選手の「本音」を描いたものはないはず。滝川の「捲り狙って」にはとにかくビックリ。「捲り」は予想紙ではほとんど使わない言葉なのに、堂々と使ってくる。サービス精神旺盛だなあ。

 バンクは、普通の400バンクに見えたが、クセがなく、捲りが決まりやすい感じだ。たとえ、3コーナーで張られても、そのまま4コーナーまで食い下がっていけば、真中から外にやや伸ぴるコースがあるようで、十分巻き返すチャンスはある。岸和田の直線を短くしたような感じだ。逆に、逃げや中割を得意をしている選手にとっては、相当不利。番手の選手と、捲りの選手の折り返しを買って、あとは捲りのスジの折り返しを買うのが良さそう。
 
 というわけで、捲りのスペシャリストの活躍が目に付いた。
 6R山本清治(愛知31)は中団から先捲りで2着。8R8番車の斎藤仁(徳島83)も、中団から一気に捲って1着。まさに水を得た魚、のごとくだ。

 さて、9R。さっそく脚見せから、“なかやさ〜ん!”と声援を送る。すると、こっくり頷いてくれたように見えた(あとで確認すると本当は「なかたに」でした。次からきっちり呼びます)。
 中谷さんの地元バンクで走っている姿が見られるだけでも、大変嬉しいのに、レースでは勝って車券を的中させてくれて、もう最高の気分。結果的に、その日唯一の的中となってしまったのだが(泣)
 
 最終10Rは、「捲り」と言ってたはずの、滝川が何とカマしてしまう。あわてふためく山口を尻目に、福田がインをすくって中団を奪取。何で九州4人いるのに、インすくわれるの? そのまま福田が捲ってゴール前大前が差して、中穴。大前さんは高校時代は枚方に住んでいたこともあり、応援しているのだけど、相性悪いなあ。買ったら飛ぶし、買わなかったら来るし……。

 というわけで、現地での全レース終了。場外発売している大垣記念初日特選で、6番車の加藤慎平(岐阜81)で一発逆転を狙う。4コーナーでは、いい感じだったのだが……気合で番手回った地元山口幸二(岐阜62)が、わずかに交わしていた……ウラだ。

 競輪場を出て、バス乗り場へ向かうと天神行きの友の会バスが。往復が原則なのだが、席が空いていると片道だけでも乗れる。有料とはいえ、片道300円、往復だと500円。電車が片道600円なので、大変リーズナブル。
 他の競輪場も参考になるはずである。特に今後競輪場が統合されていくだろう現状を考えると、遠来からの客からのサービスとして、必須になってくるだろう。例えば、水戸。宇都宮と取手、いわき平へのバスを出すと便利である。長野からも、何ヶ所か回れば弥彦や前橋へのバスが出せるはず。

 良くも悪くも独自性が高い競輪場だった。でも、いい印象のほうが強かった。


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