2001年7月20日(金)
小倉競輪初日

  7月19日(木)の夜、大阪から博多行きの「ムーンライト九州」に乗り、9時間。
 日が空けて20日になると、青春18きっぷが使用できる。ということで、指定席は満席。九州だけではなく、途中の山口県で降りる客も多かった。

 さて、今回の旅は小倉→松山と競輪場を回り、西日本の競輪場全場制覇を達成しようというもの。小倉はドームでない時代に一度行ったことがあるが、ドームを見ないことには全場制覇とは言えない。これが終わると、今後は残り6場となった関東の攻略に専念できる。

 まずは小倉を過ぎ、列車の終点である博多の地に足を下ろした。
 すでに、博多の夏の風物詩、祇園山笠は終わっていて、続いて行われるイベント、世界水泳の垂れ幕が下りていた(オーストラリアのエース、イアン・ソープはやっぱり強かった。190センチ台の恵まれた体、競輪選手になってはどうだろうか。)。
 博多の駅前には、450円で食べられる朝のラーメン定食がある。
 博多自慢のとんこつラーメンはもちろん、ごはんに味付け海苔、ゆで卵がついて、キムチ食べ放題。これで450円は安い。だから、九州へ行ったら朝は必ずココ、である。

 博多駅からは列車でわざと遠回り。原田という駅へ一度南下して、それから筑豊本線へ。冷水峠をひと超えだ。本線なのに、なぜか1日6往復しか列車がない。1両のディーゼルカーが、30分足らずの区間を行き来している。
 横の国道を見たら、峠を超えるところまで片側2車線。人の流動は盛んなのである。なのに鉄道は1日6本とは。
 峠は長いトンネルで超えた。エンジンはまったく停止し、あとは惰力で平地へ降りていく。びっくりしたのは、全てが下りの駅間があったのだが、駅を出て平地にかかると、すぐにエンジンを止めてしまった。最初はゆっくりゆっくり降りていたのが、下るにつれて、スピードがどんどん上がっていく。自転車で坂道を下るときに、ペダルやブレーキを使わず降りていくような感覚。面白かった。

 筑豊本線を離れてからは、後藤寺線→日田彦山線を経由し、小倉へ向かう。
 小倉の安立山もそうだが、九州の山は、男々しい形をした、正三角形に近い尖った山が多い。木が低いので、岩の輪郭そのものの姿形を見ることができる。九州の雄大さをあらわす一つだと思うので、ぜひとも注目してほしい。

 ……と寄り道をしていたら、小倉に着く頃には、12時を過ぎてしまった。

 駅の改札口の手前までモノレールが入線していて、スムーズに乗換えができるのが嬉しい。バス王国福岡らしく、博多ほどではないが、めまぐるしくバスが発車していく……。
競輪場への無料バスは……と、おいおい11時で終わってるやんけ! なんと一日2本しかないぞ
 結局、最寄のバス停も分からず、適当に乗ったバスは途中から全然違う方向へ。間違ったことに気づき、降りて競輪場へ徒歩で急ぐが、もう1時を簡単に回っていた。
 
 前橋に続いて、2番目のドーム競輪場は壮大だった。4階の入口へエスカレータを登る。
 競輪場の手前に、駐車場と草地のある広いスペースがあるが、元はドームに建てかえられる前の、旧小倉競輪場の跡地である。4年前の競輪祭に行ったことを思い出す。あの時すでに、このドームは外形を見せており、旧小倉最後の競輪祭となった。もう、その時のものは何も残ってはいなかった。

 ここの特徴は特観席の券の売り場が、一般入口の前にあること。
 一般席は100円で、コインを改札機に入れて入場するスタイル。特別観覧席は、最初は2000円だったのが、値下げされて1,000円になった。
 その特観席に上がる。ジュース飲み放題。武雄に続いて、ハイジのミルクココアがここにもある……。バンクはガラスの仕切りを挟まず見ることができるのは、初めての体験。バック側に席はある。一般の競輪場のマスコミ席のような高さで、バックを走る選手は、90度首を下げて見ることになる。各席にはモニターが設置され、小倉の開催のオッズ、レース実況ほか、スピードチャンネルで流されている熊本S級シリーズの放送も見ることができた。

 そういうことを確認している間に6Rの締め切りが近づく。
 ここは、堀端義治(石川61)のカマしが決まるはずで、乗る中村義弘(兵庫58)がチャンスなのでは、と思った。
 かつて、S級を張った中村も、いつのまにかA3班、84点と信じられない成績なのにはびっくりしたが。
 後は人気で90点持っている松井竜二(岡山58)を押さえれば、と思って、券を買いに行こうと思ったところで、無情にも締め切りのベルが。
 レースは前を取った堀端が突っ張って先行。中団を無事取った松井がバック過ぎから捲っていったが、中村がブロック。松井は無理せずそのまま中村に続く感じになり、中村−松井の同期で仲良くゴール。

 う、買えたら的中だったのに……。しかもこれが何で2410円も付いてるの……
 暗雲が私の中を漂い始めた。

 それはその通りで、ここからさっぱり当たらない。7Rには、予選スタートの身で95点持っている春田誠一朗(鹿児56)が登場。実は本日の私のお目当てだったりする。この日は今別府尚(鹿児79)という目標はいたが、逃げる可能性が高いのは毛利昇平(京都79)だろう。そこで春田から、今別府と毛利番手の山本利彦(大阪57)、そして九州が不発になった時のために、山本−毛利も投入した。

 レースはやはり毛利の先行。ところが近畿の後ろから何故か岩田強(岐阜36)が先捲りを打つ。これは山本が止めたが、そのスキに中団に嵌った今別府が捲ってくる。春田はインを突く。4コーナーから直線へ。
 春田がいい感じで山本の後ろに取り付いて一気に追い込んでくるように見えたのに、何故か春田の後ろにいた山下竜也(熊本72)にインを突かれ、そのままズルズル後退、しているように見えた。何故だ! 18610円の高配当
 ゴールは外伸びた今別府と中伸びた山下。春田は3着にも残れなかった。これには口があんぐり。あとでVTRを見ると、どうも追い込み始めたときに山本に接触して後退したようだった。実に残念。

 8Rは選抜戦。たぶん南大輔(京都76)宇土孝之(大阪57)が先行だと思うが、宇土の最近の成績が芳しくなく、難しいのでパス。番手が頼りないと買う気になれない。レース数も残り少なく、一つは当てたいが、ここはケン。
 レースでは、近畿の後ろにいるはずだった有賀高士(石川61)が鐘で上がってきて、何とそのまま先行してしまう意外な展開。結局、中団を確保した南−宇土が捲ってそのままワンツーだった。意外や意外スジ決着やん。

 9Rも選抜戦。ここには私のお勧め選手、片山慎二(大阪65)が出る。相手先行は、光畑政志(岡山84)。バック数では光畑だが、どちらが逃げるか微妙だ……。
 そこで、本線は光畑番手の「偽造軍団」(元ネタはプロレスです)の一人(ちなみに団長は中野浩一(福岡47))、阿部亮治(広島64)から。光畑はもちろん、ズブズブ時の「人気者」真鍋浩二(香川51)へ。
 ただし、片山さんの番手も一筋縄では行かない。向吉信之(兵庫65)だ。8番車ということもあり、全然人気がないが、片山さんが出切ってくれれば、まず差せる。
 ただし地元九州からは、廣橋康加(佐賀72)名川秀樹(福岡60)らが番手勝負を狙っている。競られたら、その時は仕方がない。競られないように、カマしで行ってくれ、片山さん。車券は阿部「偽」リョウジと、向吉からの両面で。

 ……だったのだが、片山さんが先行態勢に入った途端、廣橋がインから飛びついてきて、一発で番手奪われてしもうた……。
 最後の直線で廣橋−名川が片山さんを交わして決着した。配当は3610円。なかなか付いたとは思う。
 
 それにしても、メーン前だというのに、観客席には空白が目立つ。立派なスタンドがもったいない。

 的中がないまま最終レース。初日特選だ。
 ここには中川博司(熊本78)が出ている。競走得点は98.56。2年前101点持っていて、S級を決めたか、と思った甲子園で悪夢の失格。それ以来、S級の点数に一歩足りない状態が続いている。今期残りは、ここと向日町。何とかいい点数稼いで、12月からはS級で走る姿が見てみたいが。きょうは同県河添信也(熊本74)に乗る。河添が捲り屋だけに、どれほど押し上げられるか。
 レース自体は4分戦。一応人気は山口貴嗣(福岡82)が集めている。私にとっては、5月久留米で見て以来で、今回も初日。最近の成績見ても初日は分が悪い。しかし、番手は檀雄二(福岡66)。徹底的に援護してくれるはずだ。よって、山口から何点かと、熊本ライン、原司(佐賀70)高井広明(岐阜58)の臨時混成ラインのスジを購入。

 特観席を離れ、正面の一般スタンドに移動。最終の号砲が鳴る。

 レースが始まった。結局福岡両者が前を取ってしまう。ありゃ、今日は捲りか? 赤板で早くも杉原純一(岡山68)甲斐下智(広島64)北田昭志(愛媛66)が上昇。前にいた福岡両者を押さえに掛かろうとするが、ノロノロと押さえに行ったせいで、山口が強引に突っ張ってしまった。休むことのないフルピッチだ。杉原も必死に叩きに行くが、遅すぎる。山口が主導権。どう見ても、ゴール前までは持たない。

 ここからレースは激しさ満点だった。今度はホーム手前で原−高井が一気に叩いていく。しかし檀の好ブロックがあり、混成タッグはまとめて轟沈、かと思われたが、原が垂れる寸前、高井が車を外に持ち出して、そして山口に襲い掛かっていった。さすがの檀もこれはブロックできない。中団に目を移すと、中川が河添から切り替えて高井の捲りを追っていた。ラインはもうないに等しい。
 福岡勢を捲りきる高井。まだ車間が少し空いているが、必死に高井を追う中川。4コーナーでやっと中川が高井に追いつき、差しの体制に。なかなか車間が詰まらない。1/2車身ほどまで追い込んだときに足色が同じになった。そこがゴールだった。
 個人の性格、資質がそれぞれ出た楽しいレースだったと思う。高井もS級時代を思い起こす素晴らしい捲りだった。やっぱり高井には捲りがよく似合う。そして中川の闘志も素晴らしかった。敗れはしたが、福岡両者の奮闘振りも印象的だった。

 全レースが終わったのは門司と同じ3時45分。帰りのバスは分からない。いや、ないのかも知れない。正面入口のタクシー乗り場のあたりにバスを据えつけて、輸送すべきところだが、金がないのか。
 結局小倉の駅まで、歩くハメとなった。
 多くの観客が小倉の駅に向けて列を成している。やがて、儲けたお客さんはどこかに消えていくのか、だんだんと列は少なくなり、駅の手前では自分一人になっていた。
 競輪場からは30分が経過していた。

 前回門司に行ったときに入った、小倉駅北側のネットカフェで時間を潰し、夜9時50分初のフェリーで松山へと向かった。


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