門倉は、コントロールは悪いが、速球とフォークのキレはかなりのもの。99年は故障で不本意なシーズンだったが、97,98年は10勝をあげている。
エースとも言えた小池を出してまで獲得した選手だけに、活躍しなければ困る。将来性を考えてのトレードなのだろうが、故障持ちのため不安はある。
エルビラは、最速145kmの直球と大きく割れるカーブ、そしてかなり絶妙な制球力が武器。どちらかといえば、速球派。メキシカンリーグでは、2度のノーヒットノーランを達成している。今年の近鉄の貴重な先発左腕だ。先発ローテーションで2ケタ勝利が目標となる。
大リーグ通算16勝21敗と若いわりには実績が豊富なウォルコット。球団側の期待は大きく、先発ローテーションがほぼ決定。2ケタ勝利が見込まれる。制球力においては、エルビラよりさらに安定性がありそう。
この3人とも、先発ローテーションで10勝以上行けるのなら、Aクラス浮上の可能性も大いに出てくる。近鉄の救世主となれるか。
岡本も、今年は重要である。97年には10勝、防御率2点台の好成績を残したが、98年、99年はともに防御率4点台で8勝、9勝に終わった。
サイドスローから横の揺さぶりで投げる投手。まとまっていて根性もあるが、球威がないので、98年22・99年19被本塁打と一発病。ローテーションが去年同様詰まると、切れが落ちるのも難点。2ケタ勝っても2ケタ負けるタイプのピッチャーである。一発病を克服して10勝復活といきたい。
近鉄には少ない左ピッチャーで、ドラフト2位のルーキー高木(静岡高)は、99年夏の甲子園、対倉吉北高戦で、金属バット使用以後の1試合最多奪三振記録を樹立。さらに同大会では、3試合連続2ケタ三振をも記録した逸材。
大きく曲がるカーブにいいものを持っているので、左投手の優位性と不安定な投手事情からいって、早くてオールスター明けには、1軍登板も夢ではない。将来性に期待が持たれる。
このように先発はまずまず揃ってはきたが、中継ぎやリリーフの層は薄い。
中継ぎで、唯一期待できるのが、99年の後半戦、先発投手陣故障者続出で20歳ながらローテ入りをしたユウキ。まだ若いので制球の悪い荒削りな投球だが、球に威力はある。
主力の抑えは大塚しかいない。昨年は故障で、ほとんど働いてないので、いい時の速球の球威復活と、スライダーの切れが戻り次第で、今年の成績は良くも悪くもなる。いかに先発ローテーションをうまく回して、大塚に負担を少なくできるかがカギ。
新外国人のツイドリーは、押さえで使いたい方針だが、果たして1軍まで上がれるか。
投手は、先発7回中継ぎ1回大塚1回が理想。かなりの部分は打線でカバーする形になる。
中村は、昨年は低い打率や、パリーグ1の併殺打の数と、悪い部分があった一方で、31ホーマーは、僚友ローズに続いての2位。四球もパリーグ1だった。併殺さえ減らせば3番の働きは十分にできる。
クラークは、パワーヒッターというよりはミートのうまい打者である。99年は引っ張りにかかる打撃が目立ち、20併殺打を記録してしまった。打率も.287まで落ちた。とはいえ、29本塁打、84打点はまだまだ立派な数字である。三振の数も少ないので、安心して使える。もう一度、広角打法を思い出してもらって、3割復帰といきたい。
昨年、本塁打王(40本)と打点王(101打点)の2冠に輝いたローズの一発の魅力は今年も健在。来日以来、4年連続20本塁打と安定性は抜群で、長打率もリーグトップ。基本的には、故障の再発さえなければ、去年並みの活躍は見込める。
クリーンナップ以外では、2番の意識がカギ。この打順で、強力クリーンナップにつなげる役割をこなせるかで、その試合の得点が、ひいてはチーム成績の浮沈がかかってくる。
2番候補としてリストアップされるのが大村と、新人の前田だ。どちらかといえば、前田の方が面白いシーズンになりそうだ。
大村は、去年は原因不明の不振だったが、今年は3割近くは打ってほしい。俊足・左打ちを生かし、内野安打を稼いだり、ランナーが1塁にいる場合には、得意の右方向へのバッティングで、次の打順につなげる野球をしてもらいたいところである。
一方、新人の即戦力として、可能性が大きいドラフト3位の前田(東洋大)。犠打は未知数だが、高校時代甲子園で、17打数7安打、打率.412を記録。足も速く、機動力野球を推し進める、今年の近鉄のコンセプトに合致。開幕1軍、ショートの座を有力にしている。中盤以降走りに、また外野の代替要因としても、大活躍するシーンも。
2番候補は、以上の2人。
その他に気になる選手も、何人か上げてみたい。
武藤は、昨年チーム1の25犠打を記録したが、その能力をあえて捨てて、1番にチャレンジする。昨年は7盗塁に終わったが、今年は出塁後に足でかきまわす野球で、真価を発揮できるか。
184センチ、87キロ。大学選手権で優勝した近畿大学の主力打者で、日米大学野球代表としても、巨人の上原や二岡らと、共に戦ったドラフト4位の山下には、即戦力の期待がかかる。3月4日の試合で負傷した吉岡が、ケガの回復の分、調整に手間取るようであれば、開幕3塁手の可能性は夢ではない。
鷹野(日産自動車)はすでに27歳だが、即戦力で入団。98、99年の両年、社会人のベストナインに選出され、昨年はシドニー五輪アジア予選の日本代表として、スタメンでレフトを守ったアマチュアのエリート。主に守備面でチームに即貢献できそう。
これらの打撃が不足がちな投手力をカバーし、4点取られたら5点取るような打撃成績でないと苦しいが、例年近鉄はつなげる野球が安定してできないチーム。1点差で負けた試合も多く、梨田新監督の掲げる「機動力野球」の元で、どこまで得点を伸ばせるか。
機動力では、大村・武藤なら走らせて見れば、5割は成功するのでは。ただし、クリーンナップの長打に頼る打線構成では、盗塁はあまり積極的にはしてこないのでは。エンドランもしかり。
盗塁の数もさほどではないだろう。チーム全体で、シーズン通じて60前後くらい。70あれば良い方だろう。一方で、ここでも新人前田の走りには、注目が集まる。
打撃は各選手の能力は、パリーグでトップクラスといって良い。例年の近鉄打線に見られるムラを解消できれば、かなりの得点を叩き出せそう。一方投手は、昨年ほどではないとはいえ、まだ不安がある。新戦力の門倉・エルビラ・ウォルコットがうまく機能するのか。またムラのある岡本が、いかに負け数を少なくできるのか。そのあたりがカギとなる。
結論は投手の頑張りと、打線のカバーを条件に、70勝プラスマイナス5。Aクラスは、なんとか行けそうな情勢だ。もっとも、投打とも自壊すれば、例年同様最下位争いをひた走るだろう。
今年のパリーグは、フェルナンデス・ジェファーソンという強力外国人が加わった西武が、安定度で鉄壁なので、たとえ近鉄が投打とも好回転を見せたとしても、優勝までは苦しそう。むしろ期待は、昨年に続いてクリーンナップ同士のホームランキング争いが見られるかどうかだろう。その可能性は大。中村・ローズ・クラークの打席に注目だ。
また即戦力の多い新鮮なルーキーの奮闘にも注目してほしい。彼らが大きく成長すれば、来年以降の近鉄に、黄金期が到来する可能性は夢ではない。
今年の戦力の偏差値
投手力 60
守備力 60
機動力 20
攻撃力 80
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