大変なことになっている。何がって?決まっている。
今年の10月よりウェールズ(イギリスの一部、イングランドに併呑された王国)を中心に行われる、ラグビーのW杯の優勝争いのことである。
去年までは前回の優勝国であり、世界記録タイのテストマッチ(国代表同士の試合をラグビーではこう呼ぶ)17連勝を成し遂げた南アフリカ共和国代表、スプリングボクスが優勝候補の最右翼だったのだが、その連勝をイングランド(やっぱりイギリスの一部で中心)に止められてから、どうも様子がおかしい。今年の6月イタリアには大勝したのだが、その後はウェールズ、ニュージーランド(以下NZ)オーストラリア、NZと4連敗5戦目のオーストラリアには何とか勝ったが、ホームでの1点差(10−9)というまさに薄氷の勝利。
南ア優勝候補説は完全に覆されたと言っていいだろう。
では、どの国が優勝するのだろう?予選リーグから決勝迄を予想して行きたい。
ラグビーW杯は各地域での予選リーグ及び敗者復活戦を勝ち抜いた20ケ国で争われる。各国をAからEまでの5つのプールに分けて予選を行い、各プール1位での通過は無条件で決勝リーグに進出し、各2位と3位の中でのベストが争って勝ち残った3チームが決勝リーグへと駒を進められるのである。
《ラグビーのポジション》
プロップ(PR)
フッカー(HO)
ロック (LO)
フランカー(FL)
ナンバーエイト(NO.8)
スクラムハーフ(SH)
スタンドオフ(SO)
センター(CTB)
ウイング(WTB)
フルバック(FB)
〜 フォワード(FW)
〜 バックス (BK)… はハーフバックス(HB)と呼ぶ
決勝リーグの組み合わせ
(準々決勝)
Dプール1位 VS Eプール1位(Fとする)
Aプール1位 VS Bプール2位とCプール2位の勝利国(Gとする)
Bプール1位 VS Aプール2位とDプール2位の勝利国(Hとする)
Cプール1位 VS Eプール2位と各プール3位の中でのベスト(Iとする)
(得失点差等で決定)
(準決勝)
Fの勝利国 VS Gの勝利国(Jとする)
Hの勝利国 VS Iの勝利国(Kとする)
(決勝)
Jの勝利国 VS Kの勝利国
では、今回は各予選プールの予想を行っていこう。
《Aプール》
参加国……ウルグアイ・スコットランド・スペイン・南アフリカ
前大会優勝国の南アフリカが1位通過の筆頭。NZなどの強豪国に連敗を喫してはいるが、やはり地力は世界トップレベル。SOやNO.8等キープレイヤーの怪我人も戻ってくるので、本番までにはきっちりと立て直してくると見る。
2番手はことしの5ケ国対抗優勝のスコットランド。展開によっては南アを食ってしまうのでは?というほどの強さだったが、その後の控え主体のチームでの南半球遠征や、大会前のアルゼンチン戦で敗れるなど他の北半球の強豪同様浮き沈みが激しい。本番でどこまで仕上げられるか、名将テルファー監督の手腕に期待がかかる。
ウルグアイ・スペインの初出場組には試練の連続になるだろう。両国ともサッカーでは世界トップクラスの強豪として知られるが、ラグビーでは全くの無名国。下手をすれば南アには100点差、スコットランドにも50点差をつけられるかもしれない。合掌。
そんな両国の対戦だが、専門雑誌はウルグアイ有利を予想している(実際直前8月のテストマッチではウルグアイが勝っている)しかし、本番では日本を苦戦させたスペインが勝つと予想したい。
《予想順位》1位、南アフリカ・2位、スコットランド・3位、スペイン・4位、ウルグアイ
|
南ア |
スコット |
スペイン |
ウルグ |
勝ち点 |
得失点差 |
得点 |
南アフリカ |
/ |
○ |
○ |
○ |
9 |
+97 |
132 |
スコットラ |
● |
/ |
○ |
○ |
7 |
+62 |
120 |
スペイン |
● |
● |
/ |
● |
3 |
-104 |
18 |
ウルグアイ |
● |
● |
○ |
/ |
5 |
-55 |
42 |
《Bプール》
参加国……イタリア・イングランド・トンガ・NZ
今大会、予選プール最激戦区。上位2チーム(NZ・イングランド)と下位2チーム(イタリア・トンガ)は力の差が開いているが、上位同士、下位同士は接近しているため目が離せない。
ここを1位で通過すれば、決勝リーグは決勝まで比較的勝ち進みやすい組み合わせとなるが、2位通過だとプレーオフ(カナダかフィジーが予想される)は問題ないとしても、決勝リーグでは緒戦で南ア戦、準決勝ではオーストラリアかウェールズ戦、決勝ではこのプール1位との死闘となることが決定的なため、NZ・イングランドとも手の内を探り合うなどといった事はせず、真剣勝負となるだろう。あ〜楽しみだ。
予想では、地元イングランド有利と言いたいが、やはり王国の意地と才能が母国の誇りを上回ると予想して今年絶好調のNZが勝利と予想。
下位2チームの対戦も面白い。本来ならイタリアの楽勝なのだが、南ア相手に100点ゲームで負けるなど今季絶不調、3位の座も危うい。一方トンガはこれまた絶不調のフランスに勝ってしまうなど士気が高い。本番までに立て直してくるであろうイタリアを有利と見るがトンガ勝利の可能性も十分にある。
《予想順位》1位、NZ・2位、イングランド・3位、イタリア・4位、トンガ
|
NZ |
イングラ |
イタリア |
トンガ |
勝ち点 |
得失点差 |
得点 |
NZ |
/ |
○ |
○ |
○ |
9 |
+148 |
176 |
イングランド |
● |
/ |
○ |
○ |
7 |
+137 |
184 |
イタリア |
● |
● |
/ |
● |
3 |
-161 |
35 |
トンガ |
● |
● |
○ |
/ |
5 |
-124 |
47 |
《Cプール》
参加国……カナダ・ナミビア・フィジー・フランス
昨年までなら1位はフランスで当確。優勝候補の一角でもあったのだが、この1年で状況は一変した。主軸となるSOやCTBのケガ等で昨年、一昨年を全勝優勝した5ケ国対抗で悪夢の最下位。その後も調子を戻せず各下のサモアには薄氷の勝利、さらに各下のトンガにはまさかの敗戦。なおも敗戦は止まらずNZに大敗(54−7)5ケ国対抗に続いてウェールズにも再度敗戦と、3連敗で本番を迎える。それでも地力はこのプールでは他の3国を圧倒するので1位通過と予想。個人的にフランスの大ファンなので、シャンパンラクビーの復活を期待している。
2位はカナダとフィジーが激しく争う。前哨戦となったパシフィックリム選手権ではフィジーが40−29で勝っているが、カナダはトッププレイヤ−が不参加だったのであまり参考にならない。新旧交替が遅々として進まないが、ベストメンバーならイングランドを相手にしてさえも善戦するベテランをそろえたカナダに対して、フィジアンマジックと呼ばれる高精度でトリッキーなハンドリングラグビーに苦手のFWプレーの力をつけて来た7人制ラグビーの王者フィジー。安定と伸長。伸びて来たフィジーが2位通過とみる。
初出場のナミビアは他のプールの最下位候補(?)同様、1勝を挙げるのも難しいだろう。フランスに勝つのは地球が太陽系から離れるより難しい(多分)が、カナダかフィジーに勝つ可能性はウルグアイ・スペインが南ア・スコットランドに勝つよりは現実性があるのでまだ救いはある。
《予想順位》1位、フランス・2位、フィジー・3位、カナダ・4位、ナミビア
|
フランス |
フィジー |
カナダ |
ナミビア |
勝ち点 |
得失点差 |
得点 |
フランス |
/ |
○ |
○ |
○ |
9 |
+56 |
108 |
フィジー |
● |
/ |
○ |
○ |
7 |
+56 |
124 |
カナダ |
● |
● |
/ |
○ |
5 |
+32 |
114 |
ナミビア |
● |
● |
● |
/ |
3 |
-144 |
42 |
《Dプール》
参加国……アルゼンチン・ウェールズ・サモア・日本
ウェールズの力が他の3国を5歩はリードしているので1位通過は間違いないが、日本・アルゼンチン・サモアは、日本の急伸によってかなり力が接近して来ているので、Bプール同様激戦が予想される。またこのプールの3位はプレーオフへの出場権を獲得できる可能性が高いので、各チームはどの試合もベストの布陣で臨む事が予想され、質の高い試合が期待できる。
レッドドラゴン=ウェールズが長い低迷期を脱し、今では世界のトップ5に数えられるまでになった。その最大の功績者は言うまでもなく、NZより招かれた知将グラハム=ヘンリーである。国技ラグビーを自国で開催されるW杯までに、伝説とまでなっている70年代の黄金時代を現代に甦らせる。この困難な命題をヘンリーはわずか1年足らずで成し遂げようとしている。正にNZおそるべしである。そしてサモア・アルゼンチンもまた監督にNZ人を起用している。監督の効果か不明だがアルゼンチンは従来のFW一辺倒のラクビーから脱却。BKへも積極的に展開するラグビーを模索しているとのこと。本来はBKにもかなりの潜在力があるので本番までに開花できるか。サモアも個人能力のみでの試合から15人一体のラグビーへの転換を図っている最中。この2ケ国は前大会でも戦っていてサモアが勝っている。しかし今回はスコットランドに勝つなどアルゼンチンの仕上がりがいいのでアルゼンチン有利と見る。
そして我らがジャパンだがウェールズはともかくサモア・アルゼンチンには十分対等に戦える戦力が整ってきた。日本代表史上最強と言われる今回の代表チームだがどこまでこれらの強国に通用するか、そしてワールドクラスのエースWTB大畑は強豪相手にトライをいくつ奪えるのか?興味は尽きない。恐らくサモアとアルゼンチンにはパシフィックリムの優勝メンバーが中心になるだろう。最強の敵ウェールズには更にガチガチの手堅い試合も予想されるが、こういった相手にこそ是非ギャンブルを仕掛けて欲しい。HBはバショップ−広瀬にくらべると不安定でリスキーだが、抜群のスピードとスペース感覚を誇る村田−岩渕でガンガン攻めて欲しい。彼らのテンポの速さと変幻自在の攻めにはウェールズといえども、きっと戸惑う。そしてバックスリーには両WTBに大畑・ツイドラキ、FBに増保(スピードでは2人に1歩遅れをとるが、豊富な運動量と的確な読み、そして堅牢な防御はFBでも絶対力を発揮する筈!)を起用、全員WTB勢で固めるなど、とにかくスピーディーでわくわくするラグビーで挑んで欲しい。
平尾監督、いかがでしょうか?(見てへんって)
《予想順位》1位、ウェールズ・2位、アルゼンチン・3位、日本・4位、サモア
|
ウェー |
アルゼ |
日本 |
サモア |
勝ち点 |
得失点差 |
得点 |
ウェールズ |
/ |
○ |
○ |
● |
7 |
+47 |
118 |
アルゼンチ |
● |
/ |
○ |
○ |
7 |
+32 |
83 |
日本 |
● |
● |
/ |
● |
3 |
-104 |
36 |
サモア |
○ |
● |
○ |
/ |
7 |
+25 |
97 |
《Eプール》
参加国……アイルランド・アメリカ・オーストラリア・ルーマニア
1位と2位が唯一完全に決まっていると言っていいプール。NZと並んで優勝候補筆頭のオーストラリアにとって予選プールは調整場所に過ぎない。唯一の難敵アイルランドは2位通過を優先して、オーストラリア戦は主力を休ませる(大ブーイングもの!!)と発表している。アメリカは直前にイングランド相手に100点ゲームで敗れているし、ルーマニアも弱体化が叫ばれて久しい。どちらが勝ってもプレーオフ進出は難しいだろう。
第2回W杯を筆頭に、幾多の死闘を繰り返して来たオーストラリアとアイルランドがベストメンバーでぶつからない限り、このプールは盛り上がりにかけたまま本選を迎えることになる。真のワールドスポーツを目指すならばトップ国同士がこういった試合をするのは疑問。ぜひアイルランドにはベストメンバーでのオーストラリア戦を期待したい。
《予想順位》1位、オーストラリア・2位、アイルランド・3位、ルーマニア・4位アメリカ
|
豪州 |
アイルラ |
ルーマ |
アメリカ |
勝ち点 |
得失点差 |
得点 |
オーストラ |
/ |
○ |
○ |
○ |
9 |
+104 |
135 |
アイルランド |
● |
/ |
○ |
○ |
7 |
+23 |
80 |
ルーマニア |
● |
● |
/ |
○ |
5 |
-76 |
50 |
アメリカ |
● |
● |
● |
/ |
3 |
-51 |
64 |
主要参考文献
ラグビーマガジン誌(ベースボールマガジン社)
スポーツグラフィック ナンバー(文芸春秋社)
その他新聞各紙を参考にしました。 |